教育によって未来をひらく国

日朝音楽芸術交流会会長
池辺幸惠

 今回「朝鮮民主主義人民共和国建国70周年」を祝賀する記念すべきときに訪朝させていただきました。

和解と友好、信頼関係をうちたて平和に向かって進んだ2018年

 今年、2018年は、まさに平昌オリンピックへの朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の参加にはじまり、4月27日の南北首脳会談、そして六月一二日におこなわれた画期的な朝米会談へとつながりました。長い間敵対していた共和国と米国の首脳、金正恩委員長とアメリカのトランプ大統領のシンガポールでの会談は、まさに世界を驚嘆・驚喜させた21世紀の一大トピックでした。
 2018年は、この三つの和解と友好と信頼をうちたてたことにより、長年懸念されてきたそれぞれの敵対関係が一挙に融和し平和に向かうすばらしい年になりました。それらを生み出せたのは共和国の金正恩朝鮮労働党委員長の胆力と度胸、理性と賢明さの賜物です。もちろん金与正朝鮮労働党中央委員会第一副部長の大活躍も世界の人々の注目を集めて絶賛されました。そこには韓国の文在寅大統領とトランプ米大統領の二人がそろったことも一因だったでしょう。そして今、三か国はそれぞれに具体的な交渉にはいっています。わたしたちは心から朝・韓・米・中の国々の平和と友好、正義と信頼の外交が今後とも花開き実を結んでいくようにと日々祈っています。

民間から日本と共和国の友好を

 明治時代からはじまる脱亜入欧で、西欧帝国主義を見習った日本は、その刃を近隣諸国やアジアの国々に向けて果てしのない無謀な戦争に突入しました。それはとても許されない悲しい所業でした。
 とくに日本は朝鮮半島を侵略・搾取・蹂躙してきました。それ故、今なお和解できぬままであるのが大変残念です。
 いまの日本の安倍政権は、明治以来150年にもわたる過去の負の歴史を隠し勝手に改ざんしてきています。昔の蛮行をすなおに謝らなくてはなりません。安倍政権は民主主義の法治国家とはほど遠い無法者の政治を重ね、今再び軍国主義に向かおうとしています。
 わたしたち人間中心のチュチェ思想を知るものは、自主自立の気概もなくアメリカの言いなりになっている安倍政権によるこれからの日本の向かう道が恐怖でもあります。今こそわたしたち日本国民の一人ひとりがチュチェ思想にそって、自主自立し、革新すべき時だと思います。

訪朝団出発

 日本と朝鮮との国交は断絶したままですが、たとえ民間からでも日朝関係を修復し友好改善へと向けていけたらと、今回わたしは「金日成金正日主義研究全国連絡会代表団」の一員として訪朝してきました。
 団長は埼玉大学の鎌倉孝夫名誉教授、副団長は神戸市外国語大学の家正治名誉教授、秘書長は福島訪朝者の会会長の住谷圭造氏、団員3名の6名の団でした。
 当初の予定が台風が近づいて関西空港が発着中止になったので、急きょ翌日羽田空港からの便になりました。
北京はかつてない青空でした。ちょうど北京で開催されているアジア・アフリカ会議にそなえ、中国共産党が2週間前から排気ガスを出す工場などの操業を停止にしたそうです。
 朝鮮大使館でビザを取得し北京空港を午後3時に発ち、1時間半で平壌に到着して高麗ホテルに向かいました。

未来のために教育を重視

 9月7日の午前中には平壌教員大学を参観しました。「科学で飛躍し、教育で未来を保証しよう」というスローガンが大学に入った途端に眼に入りました。この大学は今年創立50周年に当たっていました。科学者や学者を養成する金日成総合大学とちがって、教員を養成するための質の高い教育をしようとしています。ここでつくった教材が、全国に普及されていくそうです。
 教育の近代化の例としてIC(集積回路)が駆使されていました。触れればさっと変わるICボードとパソコンが連動し、学生が動くとそれがそのままスクリーンの童話の主人公の動きになったり、小学生がICをつかった動くロボットの自動車や作業車等を使えるようにつくっていました。教育の場でさまざまな形で活用されていくのでしょう。図書館の資料もICで縮小して保存されていました。画像やホログラム・絵・環境・歌・音楽・リズム等々、子どもたちの喜ぶ教材を開発していました。足元で魚が泳いだり、宙に浮かぶ生物を全方向から見られたり、ゴーグルをかけると新たな世界が広がったりとびっくりすることばかりです。
 画面のなかの子どもたちを相手に、さまざまな授業展開の実習をしていました。中国語・ロシア語、英語での実習も可能です。
 ピアノの生演奏を聴きながら絵を描いたり、習字をしたりしていました。リズムにのせた方が筆がすすむのだそうです。情感を養って総合芸術をめざしています。リズムがあり映像もあれば知能も高められるそうです。
 母親が学ぶ教室もありました。学校は先生、家庭では親が教師で家庭環境、家庭教育が重視されています。社会に出ても家庭教育が大切とのことです。
 教育評価室では、成績を評価する方法として、IQ(知能)とEQ(人間性)があって、人間的な成長にも目を向けています。試験場のテストだけで評価するのではないプログラム化を具体的にしていました。
 一方、学生たちが教授の人格と指導の両面からの評価をします。生徒たちに好かれているか否かなども評価するそうです。
 人間としての活力や自然の真理をさとるように教え、偉大な金正恩時代を展開する革命の創造者となる教員が養成されているそうです。
 最後に「学習は、学生たちの第一の任務である。熱心に勉強して、優等生になろう」というスローガンがありました。日本の安倍政権の修身復活組が喜びそうな一途な熱心さです。しかし共和国の場合は人間中心のチュチェ思想、自主自立、正義と平和、以民為天の哲学が全てにおいてゆき渡っているので軍国主義に向かう心配はまずないと思われます。

人民第一主義の経済建設

 つぎに柳原製靴工場を参観しました。工場らしくない建物で入口は豪華な木の扉でした。縫製・製靴もいろいろな段階に分かれ流れ作業でおこなわれていました。共和国では最初の製靴工場として発足しました。
今では年間1500万足も生産しています。(40%が種目別スポーツ靴、30%が一般人民用、30%が地方から注文を受けてつくる)。
 会議室にはテレビがあり、遠隔教育の部屋もあって、労働者たちは科学技術での創意や運営を工夫して革新をめざしています。
 午後からは平壌製鞄工場を参観しました。「幼い時から自国のもの、自分のものを持つことは大事」との教育がされています。サンプル室には217種類の鞄でいっぱいでした。学生用リュックサックを作っています。工場は研究室と生産建物ABCの5棟あり、160日間で完成したそうです。年間30万個以上生産し、そのうち24万個が学生用です。レーザー裁断機もあり、裁縫は今後国産のミシンにしたいそうで若い女性たちが一心にミシンを動かしていました。総合システム室では、前面のパネルに、工場内の品物の動きが全部把握できるようになっています。工場の構内には教育・文化区域もあり、働く人が喜び学べる部屋・福利厚生を各工場にそろえており、人民を第一に考える思想が生かされています。
 つぎに平壌化粧品工場を参観しました。工場は2016年12月に完成し、年間四トンも生産しています。140万個から250万個に増産したそうです。他にも全国に化粧品工場は3か所あるとのことでした。医療用の機能をもつ化粧品も開発しており、今後、国際市場にも通用する化粧品をつくっていくそうです。すべてがオートメ―ション化されており感心しました。

最高の水準で慶祝する

 金正恩委員長への贈り物の贈呈式が高麗ホテルでおこなわれました。受け取りは、李恵貞・ 朝鮮社会科学者協会第一副委員長・朝鮮社会科学院院長でした。工場見学から帰って、急いで着物に着替えて贈呈式に参加しました。
 金日成金正日主義研究全国連絡会代表団の鎌倉孝夫団長から、金日成花と金正日花の水墨画が贈られました。
 9月8日は、錦繍山太陽宮殿を表敬訪問しました。金日成主席と金正日総書記にご挨拶しました。
 帰り道は黎明通りを走りましたが、来るたびにニョキニョキとモダンなビルが建っていてびっくりします。

世界各国のチュチェ思想研究者が参加した国際セミナー

 午後は人民文化宮殿で、「チュチェ思想と朝鮮民主主義人民共和国の70年」に関する国際セミナーがおこなわれました。司会はチュチェ思想国際研究所の尾上健一事務局長が務めました。
 アフリカからはエジプト、エチオピア、ナイジェリア、北欧からは、デンマーク、スウェーデン、アジアからもインド、ネパール、パキスタンなどの国のチュチェ思想研究者が参加しました。
 ヨーロッパからは、ウクライナ、ロシア、フランス、イギリス、ポーランド、中南米からは、メキシコ、ブラジル、その他多くの国々が参加していました。今は、激動の時代であり、国と民族の自主権・自決権にもとづき、団結、自主性、自立、自尊が大事な時です。民族の生命と尊厳を守り、正義の新世界をもたらすよう科学と真理を謙虚に学ぼう、人民の幸福を実現するための方針を伝えよう、チュチェの旗を高く掲げて進もうなどの主張がなされていました。各国ともにチュチェ思想を学び実践していること等が発表されました。
 夕方には高麗ホテルで、共和国政府主催の祝賀レセプションがおこなわれ、わたしたちも参加しました。
 21時から 平壌体育会館で、芸術公演がおこなわれ、参観しました。 中央にピアノ、左右にそれぞれ一般と軍の二つのオーケストラが配置され、後ろにコーラス隊、総勢約500人の大オーケストラの前に出てきて歌う歌手たちはいずれも人気歌手らしく、とても素晴らしいコンサートでした。

創建70周年祝賀閲兵式・市民パレード

 9月9日、共和国創建70周年祝賀パレードが金日成広場でおこなわれました。幸いよいお天気でした。金正恩委員長がいらっしゃるので、手ぶらでと言われて帽子をもってきてない人も多かったです。後ろの上のテラスを見ると、金正恩委員長がテラスから身を乗り出すようにして手を振っておられたのがよく見えました。
 さすが、創建70周年ですから、いままで(2回見たことがあります)と違って、先に閲兵式から始まりました。そして、戦車の後に集中高射砲台車が続いた後、いつもなら大陸間弾道ミサイル(ICBM)がこれでもかと、最後のフィナーレをかざっていたのですが、今回はありませんでした。これも朝米共同声明で、朝鮮半島の非核化を目指すと宣言したので早速実行にうつされたのです。朝鮮の核は自己防衛のチュチェの核です。
 パレードの後半は平壌市民のみなさんの喜びの声に囲まれて、「自主」「自立」「自尊」「一心団結」などチュチェ思想の格言でいっぱいの山車がたくさん並びました。空には複葉機が70の文字の形に並んで飛行し、戦闘機が五色の雲の尾をひいて飛び交って、みな空を見上げて歓声をあげました。

大マスゲームと芸術公演「輝かしい祖国」

 夜は、15万人が収容できるメーデースタジアムで、70周年記念大総合芸術公演がありました。
 一面の白い床にホログラムのように立体的な映像が浮かび上がり、嵐で水が立ち上がったり、山や海を模したりしていました。
 上を見ると「輝かしい祖国」とかかれたライトのドローンが上空を横切り、スタジアム内をホログラムの鳥が飛んでゆき、目の前では約一万七千人の中学生が見事なスクリーンをつくり出し、地上では一糸乱れぬ素晴らしい演技が大展開されました。前回見たアリラン大公演に負けない素晴らしい総合芸術でした。
 最終日の9月10日は、午前中に人民文化宮殿で、社会科学院経済研究所の李基成博士による講習会がおこなわれました。
 午後には地下鉄を参観し、夜は、お世話になった通訳の姜哲さんの慰労会をおこないました。

これからの日本、世界をどうするのか

 今回の共和国訪問で、朝鮮人民が、祖国の正しい成長に向けて夢を描き理想を追い、一心団結して喜んで邁進している様子を目の当たりにして、たいへん感動いたしました。
 また、他の国々によるチュチェ思想研究とその実践による成果もいろいろと聞かせていただきました。日本でも今の棄民政策でなく、このような一人ひとりの幸せを第一義とする人間中心のチュチェ思想を生かし実践していく必要があると切に感じられました。そうすれば日本も明るい未来が開けるでしょう。
 そして、世界の非核と平和、愛と友好と親善の交流に向けて、明るい未来が花開いてゆけるでしょう。
 チュチェ思想がこの日本にも生かせるよう、よく学び行動に移してゆきたいとの決意をもって帰国いたしました。お世話になったみなさま方に心から感謝申し上げます。