「拉致問題」を永続化するのは朝鮮敵視をあおるための謀略
まず糾弾すべきは日米帝国主義の戦争犯罪

雑誌『世界』に「『拉致問題』風化に抗して」と題して朝鮮を誹謗中傷する連載記事が掲載されています。

著者は、2002年9月の歴史的な日朝首脳会談を契機にして日本に帰国した拉致事件の当事者である蓮池薫氏です。

雑誌『世界』の堕落

雑誌『世界』は、かつてもっとも進歩的な雑誌であると言われていました。『世界』の編集長は金日成主席と会見したことがあり、韓国が軍事政権下にあったときには「T・K生」の名前で「韓国からの通信」を連載していました。

ところが今となっては朝鮮を誹謗中傷する記事を連載し、朝鮮敵視政策をあおる役割を果たすようになっています。

蓮池薫氏は、朝鮮のなかではかぎられた地域でしか生活しておらず、自分が体験していないことや知る由もないことを論じることができるのは、誰かが書いたものを引き写すか、与えられた情報をもとにして作文したとしか思えません。

荒唐無稽な論理で朝鮮を非難する売文家

蓮池薫氏は、「日本人拉致の目的(その一)」と題する3回目の連載記事のなかで、1977年7月14日に金日成主席が、「よど号」グループが生活していたという「日本革命村」を訪れ、日本革命に関する「教示」をした、それを受けて「よど号」グループの責任者が〝日本で金日成主義にもとづく革命をおこなうために日本人を海外で獲得することが当面の課題となる″と述べたと書いています。

金日成主席が日本革命に関する「教示」をおこなうということ自体が荒唐無稽な話です。

チュチェ思想は「革命と建設の主人は人民大衆であり、革命と建設をおしすすめる力も人民大衆にある」という思想です。

各国の革命と建設は、各国の民衆が自分の意志と力でおしすすめるものであり、他国の革命について、金日成主席が指図するということはありえません。

金日成主席は、チュチェ思想と朝鮮革命の経験を学ぶことによって、新興独立諸国の人たちが新しい社会建設をよくおこなっていけるだろうと話されたことはありますが、一貫して各国が自主的立場を堅持することを強調されていました。

拉致自体はいかなる理由があっても許されることではありませんが、朝鮮において蓮池薫氏らは優遇されて生活を送っていました。にもかかわらず彼が自らの体験とは無関係の情報にもとづいて、拉致事件についてことさら大声で語るのは、日本の朝鮮敵視政策、日米による戦争策動を正当化するためです。また反動政府に従属して自らの安定した生活を守ろうとする姑息な意図があります。

真の問題解決は信頼関係の構築、話し合いから

1970~80年代、朝鮮の特殊機関が妄動主義、英雄主義に駆られ、日本人を拉致する事件がおこりました。これにたいして、朝鮮側は謝罪し、今後こうした問題がおきないようにすることを約束しました。また、日本政府が日朝間で合意した内容を覆して不誠実な対応をおこなっても、拉致被害者やその家族の帰国のために誠実に対処してきました。

2002年9月、金正日総書記と小泉純一郎首相(当時)は日朝平壌宣言を発表し、日本が朝鮮を植民地支配して以来100年にわたる日朝間の不幸な過去を清算し、相互の信頼関係にもとづいて国交正常化交渉をおこなっていくことを宣言しました。

敵対的関係があるなかで生じた問題を真に解決しようとするのであれば、信頼関係を構築し、真摯な立場での話し合いがなされなければなりません。

しかし、日本政府は朝鮮とのあいだで合意した事項をすべて反故にし、朝鮮との交渉をしないばかりか、朝鮮の正当な自衛的権利の行使さえ認めようとしません。

いま日本政府は敵基地攻撃能力の保持をうちだし、朝鮮への先制攻撃も辞さないと公言しています。

日本が朝鮮に侵略した歴史は消えない

1910年、日本は朝鮮を植民地とし、ありとあらゆるものを奪いつくし、植民地支配に抵抗する人々は投獄、虐殺しました。皇民化政策を進め、日本語の強制、創氏改名と、朝鮮人に耐えがたい苦痛を与えました。

1930年代からは100万人以上といわれる朝鮮人が強制連行され、20万人ともいわれる朝鮮女性が「従軍慰安婦」として強制的に拉致・連行され、人間としての尊厳と生命を奪われました。

日本はアジア・太平洋地域に対する侵略戦争をおこない多大な被害を
もたらした
(『毎日小学生新聞』2020年8月15日付より)

日本が植民地支配をおこなったのは朝鮮にとどまりません。中国や東南アジアの国々、太平洋地域の島々も植民地として支配しました。

日本が無謀な戦争により敗戦にいたるまでには、アジア・太平洋地域を侵略した歴史があります。日本の侵略戦争により3000万人以上が犠牲になりました。世界の人々は、日本の侵略の歴史を今も忘れていません。

日本は、かつての侵略戦争と植民地支配を真摯に反省し、補償をおこなうこともせず、新たな戦争に踏み出そうとしています。いま日本が危険な戦争の道に踏み出そうとしていることを世界の人々は警戒しています。

日本人民を無差別に殺戮したのは米国

第2次世界大戦末期、米国は日本を降伏させるためと言って、大規模な空襲と原爆投下をおこないました。

とりわけ1945年3月10日の東京大空襲は一夜にして10万人が犠牲になる無差別爆撃でした。焼夷弾によって広範囲な市街地を焼き尽くした爆撃は、軍事施設ではなく一般市民や民間施設を対象としたものでした。

同年8月6日には広島に、9日には長崎に原爆が投下されました。一瞬にして広島では14万人、長崎では7万人が犠牲になり、現在までに50万人以上が原爆の後遺症で亡くなっています。

米国は、第2次世界大戦後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争と、戦争をくりかえしてきました。

こんにちにおいては、ウクライナを戦場にして、ロシアをつぶすための戦争に血道をあげています。今この瞬間にも戦争によって多くの人々の命が奪われていっているにもかかわらず、帝国主義諸国はウクライナに武器や弾薬を供給し続けています。

帝国主義の戦争犯罪には目をつぶり、朝鮮の一部の妄動主義者がひきおこした拉致問題のみをいつまでもとりあげ、朝鮮をバッシングしていくのは、朝鮮を敵視し再び戦争をひきおこそうとする意図があるからに他なりません。

さまざまな出版物、マスコミが日本政府の反動的な宣伝に同調し、朝鮮やロシアに対する悪宣伝をくりかえしています。そうすることによって、人々の意識が操作されてしまっています。

糾弾すべきは、侵略と戦争をこととする帝国主義であり、植民地支配をまったく反省しないばかりか新しい戦争をもくろむ日本と米国です。