チュチェ思想が示す社会主義未来の展望と道すじ
―チュチェ思想国際研究所定例研究会 東京で開催―

8月6日、東京でチュチェ思想国際研究所の定例研究会が開かれ、東京、埼玉、群馬、長野、静岡、大阪などのチュチェ思想研究者と在日朝鮮人が参加しました。

チュチェ思想国際研究所事務局長の尾上健一氏が司会を務め、研究会をもつようになった経緯をつぎのように述べました。

1945年8月6日に広島に、同月9日には長崎に原爆が下され、その後、後遺症で亡くなった人も含めこれまでに50万人以上が亡くなりました。その後も米国は朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争をひき起こし、おびただしい人々が犠牲になりました。悲惨な戦争の歴史の忘れがたい日に際して集まりを企画しました。

朝鮮大学校学長でチュチェ思想国際研究所理事の韓東成氏が開会の挨拶をおこない、朝鮮では最近、社会主義建設をおし進めるうえで思想活動とともに法の役割を重視していることと関連してつぎのように述べました。

人間は自主的で創造的な社会的存在です。しかし人間は個人としても生きています。集団と個人の関係で提起される問題を社会全般の利益と個人を尊重する方向で解決するものとして法律があります。

研究会では、朝鮮大学校政治経済学部長の李泰一氏が「社会主義の表徴と道のり」と題して講演し、ドイツ人で中国人民大学法学院修士課程のクリスチャン・ワーグナー氏が「新しい時代の夜明け:多極化された世界秩序における欧米の社会主義の課題」と題して、早稲田大学大学院法学研究科博士課程の金陽順氏が「チュチェ思想と国際法:チュチェ思想から国際法を視る」と題してスピーチしました。

講演後、意見交換がおこなわれ、日朝松本市民会議会長の小松清志氏らが発言しました。


〈講演要旨〉

社会主義の表徴と道のり

朝鮮大学校政治経済学部長

李 泰 一



朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)は7月27日、朝鮮戦争勝利70周年を盛大に祝いました。アメリカとのたたかいで勝利したという事実も重要ですが、その後70年間、それを精神的な柱にして主体的能力をいかんなく発揮し、今日まで社会主義を守り抜き発展させていることに意義があります。

金日成主席の革命実践のなかで、人類の理想社会である社会主義共産主義の面貌が明らかにされ、現在は金正恩総書記の指導によって社会主義強国の建設がおし進められ、共産主義社会へと向かっています。

先行理論において共産主義は私的所有と階級が廃止され、人々は能力に応じて働き需要に応じて分配される生産力の高い社会である、そして人々が全面的に発達した人間になるということが強調されてきました。

チュチェ思想は、共産主義社会の表徴を物質経済的要因からではなく人間の本質的属性の見地から明らかにしました。

チュチェ思想によって明らかにされた共産主義社会の表徴は、人民大衆の自主性が完全に実現された社会、すなわち人民大衆が自然、社会、自分自身の完全な主人になる社会です。

共産主義社会は徳と情のあふれた社会

金正恩総書記は職業総同盟に送った書簡のなかで理想社会の表徴と関連して、つぎのように述べています。「われわれが理想とする強国、社会主義社会は全人民が食衣住の心配をせず、無病息災で睦まじく暮らす社会、誰もが助け合い、導き合いながら喜びも悲しみもともに分かち合う共産主義的美徳と美風が発揮される人民の社会であり、わが党のすべての活動はこのような幸福な社会を一日も早く到来させることに指向されています」

共産主義社会の表徴が、民衆が物質的豊かさを享受する福利の大きさのみではなく、社会にどのくらい情と愛と徳があふれているのか、人民がいかに睦まじく互いに真心で接しているのかといった観点から、いっそう具体的に明らかにされました。

チュチェ思想は社会主義の道のりについても提示しています。

これまで社会主義制度を樹立したあと、社会主義の完全勝利、そして共産主義社会の高い段階という路線が示されていました。

社会主義の完全勝利とは、全社会を労働者階級化して無階級社会を実現すること、協同所有を全人民的所有へと発展させることなどを内容としていました。

金正恩総書記は、共産主義建設が現実的に展望できるようになるなかで、社会主義の全面的発展を通じて社会主義強国を建設し、共産主義の高い段階を建設するという具体的なステップを提示しました。

社会主義の全面的発展とは、あらゆる分野、部門、地域で同時的、均衡的に社会主義建設を発展させることを意味しています。

人民の法によって人民の権益を守る

社会主義強国を建設するうえで共和国は法の役割を重視しています。

社会主義強国建設をおし進めていくためには主体的な力、内的動力を遺憾なく発揮させなくてはなりません。大衆の力を引き出す方途として千里馬運動や三大革命赤旗獲得運動などの大衆運動を展開するだけではなく、法律によっても規制しようということです。

社会主義社会になっても人々がすぐに共産主義化されるわけではありません。人民の利益を守るためにセクト主義や官僚主義に法的規制をかけ、行政を統制するということです。

人民の要求と利害関係を法律に反映させ、人民のための法律を国家主権で守ると同時に人民も自覚的に法を遵守するのが社会主義法治国家のイメージです。

資本主義社会における法は、基本的には支配階級の既得権益を保護するためのものであり、法を守る理由は法に物理的強制力があるため、端的に言えば法に違反すれば処罰されるからです。

資本主義社会における法は階級的性格を帯びているため、これまで社会主義に至っても法は重視されない傾向もありました。

人民の法によって社会主義に住む人民の権益を守るという新しい法の支配論が、社会主義法治国家構想の核心法哲学です。

金正恩総書記の現行指導から学ぶべき点は、第八回党大会でスローガンとして提示された三大理念(以民為天、一心団結、自力更生)の再強調にあります。

以民為天は出発点であり、不変、絶対揺らぐことのない原則、理念であり、一心団結は生命線であり、自力更生は前進動力です。

歴史の外におかれ、主人としての役割だけを担わされて主人の地位を占めることのなかった人民大衆を歴史上はじめて歴史の中心にすえ、無限の価値をあたえたところにチュチェ思想の偉大性があります。