侵略の歴史を忘れず自主・平和の日本をきずくために
朝鮮戦争開始75周年の集い 静岡で開催

6月22日、静岡市において、「侵略の歴史を忘れず自主・平和の日本をきずく」をテーマに「朝鮮戦争開始75周年の集い」が開かれました。

実行委員会の主催で開かれた本集会には、地元静岡の県議会議員をはじめ日朝友好人士が多数参加しました。また東京、群馬、長野、大阪など各地区からも多くの人が参加しました。

自主性をもった民衆の要求、視点から過去を振り返る

はじめに主催者を代表して、金日成・金正日主義研究東海連絡会世話人で弁護士の山﨑則和氏が挨拶し、つぎのように述べました。

80年前、日本はアジア太平洋戦争において、アジアの多くの国々、人々に多大な損害と苦痛を与え、国内でも沖縄をはじめ多くの国民に犠牲を強いました。太平洋戦争ではアジアにおいて2000万人、日本において310万人の犠牲を出したと言われています。

日本は侵略戦争の責任と犠牲にむきあわなければいけなかったはずですが、わずか5年後には米国の朝鮮にたいする侵略戦争に加担していきました。

その後、米国に従属しながら、独自に侵略傾向を強め軍拡に進んできています。

最近では、安保三文書にもとづく防衛費の増大、軍事ブロックの強化、サイバー関係でもさまざまな動きを進めています。

そして現在、朝鮮への侵略策動が現実味を帯びてきました。

これは一握りの支配者が支配する資本主義制度に内在するものであり、国民の要求とはかけ離れたものと思います。

他方ではグローバルサウスの国々の台頭、また米国の一国主義政策や米国内の混乱からも明らかなように、現在、米国のつくりあげた覇権主義的秩序は終焉を迎えようとしています。

日本をはじめ米国に依存し、従属していた国々は、政治的経済的混乱におちいっています。

日本はいま大きな分岐点にあります。支配層の欲望からではなく、自主性をもった民衆の要求、視点から過去を振り返るとともに、近隣諸国との関係を見直し、自主、平和の道を考えていく必要があると思います。

つぎに在日本朝鮮人総聯合会静岡県本部の李治雄委員長が来賓挨拶をおこないました。

挨拶では、金正恩総書記が朝鮮総聯に送った書簡の内容を紹介しながら、金正恩総書記がいかに在日同胞のことを思いやっているのか、第一世代の思いを受け継いでたたかっていきたいと熱い思いを語りました。

朝鮮戦争を契機に経済発展を勝ち取った日本

集会では、立命館アジア太平洋大学の綛田芳憲教授が、「朝鮮戦争に伴う日本の変容と近年の日本の動向」と題して講演し、つぎのように述べました。

サンフランシスコ講和条約が朝鮮戦争の勃発をきっかけとして結ばれ、占領が終わることになりました。そして日本の民主化を進めるということだったのですが、戦後左派勢力にたいする支持が高まっている状態に危機感を覚えたマッカーサーが、共産党や社会党などを弾圧するレッドパージがおこなわれました。

今日まで一貫して自民党が日本の政治を担ってきた背景として、アメリカの支援があるということであり、その基礎をつくったのが朝鮮戦争であったということです。

戦前に権力を握っていた人たちが朝鮮戦争を要因として政治的な復権を遂げたということもあります。それが日本による戦後補償を難しくしたということがいえると思います。

朝鮮戦争が勃発してまもなく、警察予備隊ができ、保安隊に変わり、最終的に自衛隊に変わって、今日に至っている状態です。

朝鮮戦争の日本への経済的影響としてよく知られているのが朝鮮特需です。アメリカが日本から物資を優先的に調達した結果、日本の経済はV字回復を遂げ、その後の高度経済成長につながっていくことになりました。

日本の賠償や準賠償も、実は日本の経済成長を促すかたちでおこなわれました。基本的にひも付きだったのです。お金を直接渡すのではなく、日本の生産物と日本人のサービス、役務で提供されるかたちになったのです。賠償、準賠償をするなかで、日本企業がどんどん成長していくシステムになっていました。これも朝鮮戦争の影響がある事柄です。

冷戦後の日本と朝鮮との関係をみた場合、「北朝鮮の脅威」ということを強調して、それが日本の安全保障政策の転換に利用されてきたということができます。

朝鮮や中国の脅威を誇張して敵対的な政策をしていること、それそのものが問題だと思います。

今トランプ政権がイランにたいしておこなったような攻撃を仮に朝鮮にたいしておこなった場合、これは日本にも甚大な影響が及ぶ可能性があります。

アメリカと運命共同体のようなかたちで関係を強めていくという政策も問題です。

第一に、朝鮮戦争を終結させることが大事です。

つぎには、日朝関係を改善することです。核問題、ミサイル問題はアメリカが非常に重視している問題なので、日本だけで核問題、ミサイル問題を動かすのは難しいです。

ただ日朝間には、在日朝鮮人の朝鮮学校の問題もあります。戦後補償問題も置き去りです。

そういった在日の人たちの権利の問題や補償の問題、慰安婦の方や徴用工の問題は、二国間問題です。そういった二国間でできる問題はあるのです。

朝鮮戦争は終わっていない

つぎに朝鮮大学校の韓東成学長が挨拶し、つぎのように述べました。

朝鮮戦争(祖国解放戦争)の第一の意義は、共和国にとって領土と人民を死守するための防衛戦争であったということです。二点目は、第2次世界大戦後、民主主義陣営と帝国主義陣営の対立した二極間の初の激烈な大決戦であり、米帝国主義の世界制覇戦略実現を阻止し、新たな世界大戦を防ぎ、人類の平和を主導したことです。

朝鮮戦争の戦場は朝鮮半島です。にもかかわらず、停戦協定に署名したのは米国です。

わたしたちの第一の課題は、朝鮮戦争を終わらせることであり、二度と朝鮮半島、東アジアにおいて戦争をおこさないようにすることです。

金正恩総書記は総聯の第一の権益は民族教育の権益であり、これは絶対譲歩することができない最高の権益だと述べています。

在日朝鮮人は、高等学校の無償化、幼保無償化をはじめとして、日本のさまざまな教育権から排除されています。

朝鮮大学校は来年創立70周年を迎えます。朝鮮大学校が人材の育成、そして日本の地に朝鮮民主主義人民共和国の海外大学があるという存在自体を拠点にして日本との友好親善の絆を広げ、懸け橋になるように頑張っていきたいと思います。

北東アジアの平和を求めて

最後に、鈴木敏和氏がまとめの挨拶をおこない、つぎのように述べました。

今朝、米国がイランの核施設三か所を空爆したというニュースが流れていました。

ウクライナにおける戦争、イスラエルのパレスチナ人民にたいする弾圧抑圧、イランにたいする爆撃がおこなわれています。

わたしたちはアジアの民であることを忘れてはいけないし、中国や朝鮮、韓国、ロシアとも仲良くして、北東アジアの平和を求めていくことが大切であると感じます。

朝鮮戦争の開始から75年、休戦協定が結ばれてから72年もたっています。まだ戦争状態が続いています。

日本が米国と仲良くしながらも、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定にすべきではないかと米国の大統領に注進してもよいし、そのことによって東北アジアの平和が維持できるとすれば、政治家として長く歴史に残ると思います。

朝鮮には、「빈 수레가 요란하다(空の荷車ほど騒がしい)」という諺があるそうです。中身のない人にかぎってよく騒ぐということです。

トランプ大統領は、関税と取引しか頭にない人で世界中を騒がしています。宣戦布告もしないで他国を爆撃しているわけですから、いつ休戦協定が破られるのかわかりません。

わたしたちは、日本の平和のためにも、朝鮮半島や極東アジアの平和のためにも、憲法を守っていくことが大切ではないかと思います。

2002年9月17日に日朝平壌宣言が発せられましたが、日本政府はこれを反故にしてしまいました。

日朝関係のきわめて先鋭的な部分が残ったまま、すでに23年もたっています。日朝平壌宣言を実行に移すために、私たちが努力しなければならないと思います。今後とも日朝友好、平和のために、皆さんの力をかりて頑張りたいと思います。

米国は現代版朝鮮戦争を引き起こそうとしている

最後に、集会の決議文が実行委員会から提案されました。決議文ではつぎのように述べています。

「最近、米国はアジアを戦場にしようと核戦略資産を朝鮮半島近辺に配備し、米韓合同軍事演習を頻繁におこなっている。米国は、敵のミサイルを迎撃するとの名目のもとに宇宙軍の基地を日本の横田基地にも設置し、宇宙からも攻撃を加えようとしている。

米国は、世界人民の願いに反し、イスラエルのガザに対する大量虐殺を後押しするだけでなく、さらにはイランに対する攻撃も容認し、中東全域に戦火を拡大しようとしている。

これは、まさに75年前に米国が帝国主義追随諸国を動員して引き起こしたのと同じ現代版朝鮮戦争である。

日本政府は、米国の兵器を大量に購入し、南西諸島など各地に自衛隊のミサイル基地を設置し、先制攻撃をおこなう体制を整えている。全国各地で外国軍隊との合同軍事演習が繰り広げられ、日本全土が米軍基地化している。

日米韓一体となった朝鮮侵略策動は危険な段階に至っている。

現代は、グローバルサウスと呼ばれる国々が、帝国主義の支配から脱して自主的に新しい社会の建設をおし進めるようになった自主の時代である。

日本政府は、朝鮮侵略戦争策動をただちに中止し、自主・平和の道を歩むようにしなければならない」

コンサートで楽しいひと時

セミナー終了後、同会場でコンサートがおこなわれました。

はじめに、地元静岡の「杉の子会」による民謡が披露されました。

静岡の伝統的な民謡である「箱根馬子唄」「ちゃっきり節」「安倍川粘土搗き歌」そして福島の「新相馬節」が、尺八、三味線の伴奏のもとで歌われました。会場の参加者は手拍子を送り、一緒に口ずさんでいました。

つぎにボリビア出身のフェルナンド・トリーコ氏と友人によってフォルクローレが軽快に演奏され、会場の参加者も手拍子を送りました。

最後に、遠山洋子さんが登壇し、フェルナンドさんたちの伴奏で「浜辺の歌」をうたい、つぎには、持ち歌の「赤壁城の夢址」、そして朝鮮の「戦勝の祝砲よ語れ」「我が国が一番だ」をうたいました。

集会は、戦争策動に反対し、自主・平和の日本をきずいていくうえで大きな意義のある集まりとなりました。