社会的危機と民主主義
―ヨーロッパ・チュチェ思想研究学会創立35周年および朝鮮労働党創建75周年に際して―

イタリア、ヨーロッパ・チュチェ思想研究学会書記長
マッテオ・カルボネリ

みなさん。

ヨーロッパ・チュチェ思想研究学会創立35周年に際し、本セミナーのテーマについて発表させていただくことをたいへん光栄に思います。

ご存じのように、この10月は朝鮮労働党の創建75周年を祝す月でもあり、二つの慶事を祝賀する恵まれた機会となります。

ヨーロッパ・チュチェ思想研究学会の35年間

われわれの理事長であるエドモン・ジューブ教授の冒頭の報告は、ヨーロッパ・チュチェ思想研究学会のはじまりから、それにつづく発展を概観するものでした。

個人的には、理事長の報告は、わたしが1978年、朝鮮文化にはじめてふれたことを思いださせることでもありました。そのとき、わたしはまだ若い大学教員で、当時、わたしの大学の学長であるアルド・ベルナルディニ教授とともに、学部開催の会議に際し組織された朝鮮社会科学者協会の代表団をお招きしました。

わたしはすぐに、社会正義に加え、人間の、民族の、国々の自主性は、代表団が提示した思想の中心であるということに大いに関心をもちました。

チュチェ思想を研究しつづけるために、学長と破棄院(注:仏、伊の最高裁にあたる)判事であるジュゼッペ・カイゾーネ博士とともに、チュチェ思想研究イタリア委員会を設立し、わたしは初代事務局長に就任しました

。  以来、わたしは、朝鮮の同志とともに議論しながら研究を深めるため、そしてチュチェ思想の祖国での適用を確認するために、何度も朝鮮を訪問しました。わたし自身、1981年、イタリア委員会の他の創立者とともに、金日成主席にお招きいただく光栄に浴し、直接主席から現代社会の重要局面の分析について教えていただきました。

さまざまな国の委員会の活動を後押しし調整するために、ヨーロッパ・チュチェ思想研究学会は、1985年10月20日に創立されました。

エドモン・ジューブ先生が理事長、わたしが書記長として選出されたというのは、先ほど、ジューブ先生からご紹介されたとおりです。この35年のあいだ、われわれの学会は、大いに自発性を発揮し、セミナーの開催、討論会だけではなく、金日成主席や金正日総書記、金正恩委員長の著作の翻訳、出版など多方面にわたって主動的ににない、つねにチュチェ思想国際研究所事務局長である尾上健一博士、そして朝鮮社会科学者協会によって支えられながら活動してきました。

これらすべての自発的な活動は、チュチェ思想に深く学び、チュチェ思想を普及することを目的とし、つねにチュチェ思想をわれわれの国の現実に適用することを追求しています。

社会的危機の深刻化

こんにち、ヨーロッパにおいて、また世界の多くの国々においても、われわれの現状は社会的に予期せぬ事態によって大きく特徴づけられており、新型コロナウイルスの世界的流行により深刻化し、民主主義にたいしても、まさに影響をおよぼしています。この状況は一見、世界的流行から生じているようであり、さまざまな側面を熟考すると、われわれの社会体制に結びつけられていることは明らかです。

わたしは、とり急ぎ、本テーマの発表において、セミナーのなかで後で提案される議題でよく検討されることになっていますので、これらの側面のなかからいくつかを指摘するだけにとどめておきます。

新型コロナウイルスの世界的流行は公衆衛生だけでなく、社会のあらゆる領域での危機でもあるので、数多くのそして幅広い論点があります(…欠如、歪曲、新自由主義といったキーワードで語られます)。こういった矛盾が深刻化しています。最富裕層への税の軽減、アメリカ合衆国を典型とする巨大企業のタックス・ヘイヴン、ならびにさまざまな部門の民営化の結果として保健衛生にかかる費用、社会的費用削減は、経済面に、ついで他の面にも重大な影響をもたらし、崩壊の瀬戸際へといたり、社会は荒廃しています。

失業者の急増、不平等と社会的排除を目のあたりにし、歴史にコロナの多大な影響を記すことになるであろうと思います。  危機はすべての人々におとずれているわけではありません。危機は困窮者、失業者、高齢者、若者、移民、そして黒人たちにあるのです。

人権差別が生じるリスクにさらされ、あらゆる団結を萎縮させる強権的なゆさぶりをかけられ、共同体の結びつきは弱体化し、普通の社会的構造、民主主義までもがおびやかされています。

それゆえ、内部構造をウイルスの存在を前提にする社会経済発展のモデル(模範)というシステムにかえる喫緊の必要性があるのは明白です。

実際、新型コロナウイルスは不平等を加速させ、われわれの社会がもつ特有のゆがみ、すなわちもっとも弱い立場にある階層に甚大な被害をもたらし、民主主義のプロセスをゆがめるというような影響力をもっているのです。

保健衛生面で新型コロナウイルスに対応するのと同じように、社会の危機を救うための「ワクチン」が必要であり、社会正義をつらぬき、民主主義と基本的人権、すべての男性・女性の平等な尊厳を保証しなくてはなりません。そして人間は、チュチェ思想が示すように、何よりもまずすべての中心にすえられなくてはなりません。社会的経済的計画はもちろん、政治的文化的計画においても人間を中心にすえて活動しなければなりません。

人々の自主性、そのなかにおいてのみ、人間の真の自立が実現され、人々の自主性は、人間の自立にとって重要な条件になります。自主的な人民のあいだでは連帯と協働が追求されなくてはなりません。軍事的に抑圧されたり脅かされることなく、また、国際的な帝国主義と資本の同盟を背景にして強いられる経済的な制裁をうけることなく、個人の自主性も集団の自主性も実現されなくてはなりません。

すべての人々の自主性を保証する

チュチェ思想は、朝鮮の独立と解放をめざすたたかいのなかで、朝鮮人民の経験にもとづいて、金日成主席によって創始され、金正日総書記によって独創的に発展、豊富化されました。チュチェ思想は、目標を達成するために実態を分析するための有用な基準を示す原則と手段をあたえ、直面する状況の要求に応じて変化させて適用します。

この原則を適用しながら、朝鮮人民は他国の支配によって屈服させられていた国から独立国となり、進歩的な社会主義社会を建設することに成功したのです。

朝鮮労働党は創建75周年をむかえましたが、結成される以前から、金日成主席の指導のもと、朝鮮人民のたたかいを、チュチェ思想にもとづいて勝利に導き、広範な人民大衆を隊列に加えながら、人民の政治的意識を高めていきました。

金日成主席が率いる党的組織は、理論的組織的なリーダーシップを発揮し、朝鮮革命の参謀部となり、日本帝国主義の植民地支配からの解放に寄与したし、つぎに米帝国主義の侵略にたいして歴史的勝利を収めました。

党的組織の指導により人民大衆が灰燼から復活した不死鳥のように急速に国を再建させ、あらゆる難関や困難にもかかわらず、一心団結して国の防衛から経済的発展における大きな成功まで、強大な力で国と民族の自主性を保証したのです。

それは主席の指導のもとに、人民大衆を中心として発展し、朝鮮労働党に引き継がれていきます。朝鮮労働党は、労働者のハンマー、農民の鎌、勤労インテリのペンで一体となったシンボルマークで示されているように、人民大衆全体を代表しています。

人民大衆を中心にするという政治はチュチェ思想を適用したもので、チュチェ思想の適用により、人民大衆は革命と建設の主人となります。実際、「すべては人民のために、すべては人民に依拠して」というスローガンを高くかかげながら、朝鮮労働党は母なる党であり、人民にたいへん献身しています。

人民大衆の生活に配慮し、心のこもった政治をおこない、人民大衆を信頼しています。

重大で社会的な保証は、実際、全人民に確保されており、進步的社会主義体制のなかで税金がなく、無償の教育、医療、さらに他にも住宅や雇用保証などを享受しています。

それゆえ朝鮮労働党は、人民のなかに深く根づき人民大衆と一体となった党なのです。党はかたく団結し、指導思想であるチュチェ思想を唯一思想として精神的に結束し、その原則にもとづき、党の指導と威力は社会全体に浸透し、変革を可能にしてきました。

こんにち、金正恩委員長の指導のもと、朝鮮労働党は、人民を中心にすえた理論、歴史の主体としての人民大衆を守る理論である不滅の金日成・金正日主義を適用し、革命の一筋道を歩んでいます。そして主人として生きるという要求、自主性の要求を集団として高めていくことを追求しています。

白頭山からはじまった朝鮮革命の伝統の系譜を引き継ぎながら、朝鮮労働党はチュチェと先軍の思想にもとづき、これまでの活動をダイナミックに一新し、人々の幸福と安全保障を追求するため軍事的抑止と経済的発展を同時に追求する壮大なプログラムにおいて大きな成功を収めてきました。

金日成・金正日主義を原則的に適用する際、その活力と的確さを示しながら、朝鮮労働党は創建以来、数十年もの年月をかけ、社会的、政治的、軍事的、経済的、文化的領域すべてにおいて成果をもたらしました。

朝鮮労働党は、あらゆる問題を解決するためにつねにチュチェ思想を適用してきました。今後も実現させるべき重大な課題にもチュチェ思想を適用させ、自主的で社会主義にもとづいた繁栄した国の建設において、輝かしい数多くの成功を収めることでしょう。

チュチェ思想はすすむべき道しるべであり、われわれの社会システムを向上させるための価値ある手段でもあると認識するとき、チュチェ思想研究は不可欠であることは明らかです。

そのため、本日、創立35周年をむかえたヨーロッパ・チュチェ思想研究学会は、チュチェ思想の研究を深め広めていくために、今後も全力で使命を果たしつづける所存です。