日本チュチェ思想研究学術代表団とおこなった談話

1977年9月25日
金日成

あなた方はこの度、平壌で開かれたチュチェ思想に関する国際討論会に参加して、多くの仕事をされました。わたしはあなた方が多くの仕事をしても疲れを知らず、とても元気で過ごされていることを満足に思います。ご年輩の団長先生のお元気な姿を見てうれしいです。

わたしは、討論会において団長先生が情熱的に演説されるのをテレビで見て、大変感銘をうけました。先生はお歳を召されましたが、若い人より情熱的です。

わたしはあなた方がチュチェ思想に関する国際討論会を自分の仕事として考え、討論会に積極的に参加されたことについて満足に思い、あなた方に感謝します。

あなた方がチュチェ思想に関する国際討論会に参加して精力的に活動できるよう、はじめから条件をよく整えてあげるべきでしたが、わが活動家たちが国際会議をおこなった経験が多くないために、そうできなかったようです。わが活動家たちは訪問客の接待でも至らない点が多かったでしょうが、了解してくださるようお願いします。

わたしはこの度、平壌で開かれたチュチェ思想に関する国際討論会が成功裏におこなわれたと思います。わが人民はこの度のチュチェ思想に関する国際討論会が成功裏におこなわれたことについて高く評価しています。わが国を訪問している外国人たちも今回の討論会の成果を高く評価しています。今までチュチェ思想に関する国際討論会が世界各国でおこなわれましたが、この度の討論会がどの討論会よりもチュチェ思想についての討論を深くおこなったと思います。

今回のチュチェ思想に関する国際討論会に自主性を主張する国の代表たちが多く参加したことはとてもよいことです。今回の討論会に学者たちも参加しましたが、党と政府の代表団が多く参加しました。

今回の討論会でとくによかったと思うのは、多くの国の代表が新社会建設と民族的独立を強固にするための事業をいかになすべきかという問題を自国の実情と結びつけて多く討論したことです。新たに独立した国の代表団団長と代表は、どうすれば自国を自主的な独立国家に建設し、社会主義の道へすすめるかを深く研究し討論しました。わたしは、彼らの討論は自国の党と政府の立場を代弁したものだと思います。

この度のチュチェ思想に関する国際討論会に参加したすべての国の代表が国の独立を固守し、自立的民族経済を建設して社会主義の道にすすむべきだということと、資本主義の道にすすめば再び帝国主義者の新植民地主義のくびきにかけられる恐れがあるということを認識したことでしょう。

現在、新興独立諸国、発展途上諸国が団結を強化するうえで重要なことは帝国主義に反対する統一戦線を形成することです。新興独立諸国、発展途上諸国が反帝統一戦線を形成するには、互いに国家間の関係を保ち党的な関係をもって協力しなければなりません。

朝鮮労働党は新興独立諸国の党と密接な関係をもっています。新興独立諸国の党も今はまだマルクス・レーニン主義を信条としないとしても反帝的立場をもっていれば、そのような党とも関係を保ち協力しなければなりません。言葉では新興独立諸国、発展途上諸国が反帝統一戦線を形成しなければならないといいながら、そのような国の党と関係をもたなければ、どうして反帝統一戦線を形成できるでしょうか。もちろん一部の国の党の綱領と主張には制約性が多少あり得ます。しかし、それらの党も帝国主義に反対し、自主的な国を建設し社会主義を志向していることは事実です。

われわれは新興独立諸国、発展途上諸国の党に小さな反帝的要素があれば、たとえ制約性があったとしてもそのような国の党と党的関係をもつべきだと思います。一部の国の党は帝国主義に反対すると言葉では言わなくても反帝的立場をとっており、他国の民族解放運動を支持しています。そのような党はアパルトヘイトに反対する南アフリカ人民のたたかいをすべて支持しています。アラブ諸国の党はイスラエルの膨張主義政策に反対しています。この点をみれば、そのような国の党と団結することができるし、また団結しなければなりません。われわれは反帝的立場をとって民族解放運動を支持する国によい影響を与え、それらの国が正しい道にすすむようにすることがさまざまな面で有益だと思います。

わが党は社会主義国間の団結を強化するためにも努力していますが、過去に社会主義国間の意見の相違を克服し団結を強化するためのいくつかの原則を示しました。

われわれは、社会主義国が団結するには第一に帝国主義に反対し、第二に植民地民族解放運動と国際労働運動を支持し、第三に社会主義、共産主義へひきつづきすすみ、第四に内政不干渉、相互尊重、互恵、平等の原則を守るべきであるとしました。われわれは社会主義諸国がいかなる政策を実施しようとも、この原則に違反しなければ団結することができるとしました。これは社会主義国間の範囲で団結問題について述べたことであり、新興独立諸国、発展途上諸国との団結はこの範囲を少し超えるべきです。

われわれは反帝的要素があり、独自性を堅持している資本主義国の社会党との関係をもつことをためらってはならないと思います。各国の党は他国の党の内政に干渉してはならず、互いに自主性を尊重しなければなりません。党と党の間の自主性を尊重しなければ団結をなしとげることはできません。

以前、フランスの新聞「ル・モンド」の主筆がわが国を訪問しました。彼はわたしにユーロコミュニズムについてどのように考えるのかと尋ねました。

それでわたしはユーロコミュニズムだ、アジアコミュニズムだ、あるいは何々コミュニズムだというものをわたしは知らないとこたえました。そして、ユーロコミュニズムという言葉は資本家がつくり出した言葉だと話しました。

今、ヨーロッパの国々の共産党が自主性を堅持し、自国の実情に合った革命をするために努力していることはよいことです。なぜなら、ある一国の革命の経験をすべての国に機械的に適用することはできないからです。ヨーロッパの発達した資本主義国の共産党が社会党やその他の党などと幅広い統一戦線を形成して支配勢力の隷属をうけないために闘争すれば、それはよいことです。もちろん、その党が掲げている政策の中には反帝自主の原則にもとるものもあり得ると思います。しかし、そのようなことはあり得る現象です。

今、フランス、イタリア、カナダをはじめ、一部発達した資本主義諸国も自主性を求めています。団長先生が討論会で演説されたように日本人民も米国に従属することを願っていません。日本の一部支配層だけが自分たちの利益のために米国に追従しています。日本人民が何のために米国に追随することを願うでしょうか。このような条件で資本主義国のなかで自主性を求める国どうしが統一戦線を形成することは悪くありません。

この度、新興独立諸国と政権をとれなかった国から来た党代表、民主人士に、ある一国の革命経験をすべての国にそのまま適用することはできず、自国の革命は自国の特性に合わせてしなければならないという認識をもたせたことも、チュチェ思想に関する国際討論会が収めた成果の一つだと思います。

チュチェ思想に関する国際討論会に参加したすべての人々が討論会でなしとげられた成果について満足しているようです。

この度の国際討論会でチュチェ思想に関する国際的な研究組織を設けることについて意見の一致を見たことは大変よいことだと思います。討論会に参加した多くの国の代表がわが党と政府に、チュチェ思想を研究普及するためのよい意見を提起しました。わたしはタンザニア、トーゴ、マダガスカル、シリアをはじめ10余ゕ国の代表団に会ってみましたが、彼らはチュチェ思想を研究できる条件をつくってほしいと要請しました。彼らはわれわれが書いた本を自国の朝鮮大使館を通してたくさん送ってほしいと言い、朝鮮大使館がない国の代表は自分たちに直接送ってほしいと要請しました。彼らはわが国の社会主義革命と社会主義建設の経験を学んで、自国の革命と建設を自力で遂行できる思想理論的基礎を築いていくと言いました。

昨日、モザンビークの党及び政府代表団がわが国に来ました。モザンビーク大統領は大統領に就任する前にわが国を訪問しました。その時、彼はわたしにこれから国家をどのように建設すべきか、党をいかに建設すべきか、民族経済をどのように建設すべきか、新しい社会建設に大衆をどのように組織動員すべきか、教育事業はどのようになすべきか、などをはじめ一連の問題について講義をしてほしいと言いました。わたしは彼と長い時間をかけて談話をしました。彼はわが幹部たちとも談話を多くしました。

モザンビーク大統領はそれでも満足しないので、今度は再び党及び政府代表団をわが国に派遣しました。彼らはわが国に十日間ほど滞在しながら、われわれの党活動の経験、大衆活動の経験をはじめいろいろな問題について学ぼうとしています。

今、各国からわれわれに大学教員を派遣してくれるよう要請してきています。彼らはわが大学教員が自国に来て哲学の講義をしてくれるよう要請しています。タンザニアからも要請しており、マダガスカルからも要請が来ており、ベニンからも要請があり、トーゴからも要請しています。シリアからはわが国に教育代表団をはじめ多くの代表団を送ると言ってきました。多くの国で要請していることはわれわれの経験とチュチェ思想の真理を学べるようにしてほしいということです。

いつだったか、タンザニア大統領がわが国を訪問しました。その時、彼はわたしに自分の国で農業協同組合を組織しようとするのに反対する人が多いと言いながら、どうしたらいいのかと尋ねました。それでわたしは彼に、農業協同組合を組織する事業は簡単なことではなく、社会経済的条件とさまざまな条件をよく検討したうえで組織しなければならない、農業協同組合をはじめは一番暮らしが困難な農民たちで試験的に組織して、他の農民たちにその優越性を実物で見せてやるのがよい、国がおかれた社会経済的条件を具体的に検討もせず、農業協同組合を一方的に組織すれば、国の経済発展に障害をもたらすと話しました。

われわれが見たところ、一部の新興独立諸国、発展途上諸国で未だ新しい社会建設路線を正確に立てられないのは、国家指導者が新しい社会建設に関する理論で武装していないことと関連しています。

今回のチュチェ思想に関する国際討論会でチュチェ思想を研究普及するための国際的な組織を設けることにしたのは、まさにこのような客観的要求から提起されたものと思います。われわれはこの客観的要求を実現するために努力しなければなりません。

新興独立諸国と社会主義を志向する発展途上諸国の人々に民主主義革命をどのように遂行し、その基礎のうえに革命力量をいかに蓄積し、どんな路程を経て社会主義の道にすすむべきかを教える必要があると思います。それでわたしはわが幹部にわれわれの農業協同化の経験を著した本を出版するように話しました。

わたしがすでに団長先生にお話しましたが、今新興独立諸国、発展途上諸国では困難が多いです。まず財政的に困難をきわめています。それらの国では人民から税金をうけとり、国家を維持するのにも資金が足りないでしょう。それらの国は自立的経済基盤が弱く民族幹部も不足しています。何かを一つ建設しようとしても技術者がいないし、病院を一つ運営しようとしても医者がいません。民族幹部がいないので農業も発展させることができず、工場も建設が困難です。それゆえそれらの国では民族幹部の問題をいかに解決するかがとても重要です。

われわれは新興独立諸国、発展途上国の指導者たちと会うたびに、植民地、半植民地から独立した国々、発展途上国ではインテリ問題を正しく解決することが非常に重要であることを話しています。民族幹部問題を自力で解決できず、以前の宗主国の技術者を招くならば帝国主義者に再び経済、技術的に隷属することになります。

われわれは新興独立諸国、発展途上諸国が経ている困難は一時的であり、それは十分克服できるものと思っています。

今、新興独立諸国、発展途上諸国でよい点は、国の経済を発展させるうえで農業から先にもりたてるために努力していることです。それらの国が農業問題を優先的に解決し、人民の生活を安定させ、資金が蓄積された後に工業を発展させる方向にすすんでいますが正しいでしょう。このような方向ですすんでいる国々は発展展望があると見ています。

あなた方がチュチェ思想に関する国際的な研究組織を設け、新興独立諸国、発展途上諸国でチュチェ思想研究普及活動を幅広くおこない、発達した資本主義国の労働者階級を自主性実現のためのたたかいに奮いたたせる活動も繰り広げることはよいことだと思います。

チュチェ思想に関する国際的な研究組織は決して政治団体になってはならず、あくまでも学術研究団体にしなければなりません。新興独立諸国、発展途上諸国が新社会建設の経験を多く学ぼうとする条件のもとで、それらの国にわれわれの豊富な経験を教えれば新しい社会の建設に役立つことと思います。

あなた方がチュチェ思想を普及し新興独立諸国、発展途上諸国人民を啓蒙し自覚させることが重要だと言われましたが、正しいお言葉です。

今後、新興独立諸国、発展途上諸国がみな自主性を守り自立的民族経済を建設すれば帝国主義が横暴にふるまうことはできなくなるでしょう。何としても、新興独立諸国、発展途上諸国が自主的な道にすすむよう鼓舞激励しなければなりません。今、発展途上国が100余りにもなりますが、これらの国が自主性を守り緊密に協力すれば帝国主義者を孤立させることができます。こうなれば発展途上諸国が帝国主義者から搾取と略奪をされなくなり、依存しなくなるでしょう。

ある国の人たちはわれわれを内心では支持していますが、公式には支持するのが難しいと言います。それは彼らが米国から米を得て食べているからです。そのような国の人々は米国に反対するスローガンを挙げれば直ちに米をくれなくなる、そうすると自国人民は飢え死にすると言います。彼らはまた資本主義諸国から機械製品をはじめ商品を輸入して使うのに、それらの国と対決すれば商品の輸入ができなくなると言います。少なからぬ発展途上諸国は自国の軍需産業をもっていないために自力で武器を造れません。発展途上諸国が米国と他の大国から武器を買ってくるので、その国の話を聞かざるを得なくなっています。

チュチェ思想に関する国際的な研究組織が学術団体として、チュチェ思想を研究普及する活動を積極的におこなうならば、発達した資本主義国の労働者階級と人民の自主性を実現するためのたたかいにも役立つと思います。

チュチェ思想に関する国際的な研究組織を設ける場合、その事務局をどこにおくかという問題が提起されます。事務局はヨーロッパのイタリアかフランス、アフリカのある国におくよりも日本においた方がよいと思います。チュチェ思想に関する国際的な研究組織は学術団体なので、その事務局が日本にあっても問題になることはないでしょう。日本にはいろいろな学術団体が多くあります。日本はわが国の近くにあります。日本でチュチェ思想研究普及活動がすすめば民主主義と社会主義のためにたたかう日本の青年と人民によい影響を与えることでしょう。日本でチュチェ思想に関する学術研究を多くするようになると、日本で勉強する南朝鮮の留学生と日本に往来する南朝鮮の人々にもよい影響を与えることでしょう。南朝鮮には日本の放送もはいり新聞もはいり、本もたくさんはいります。南朝鮮の学生がチュチェ思想について知るようになり、自主性をもたなければならないということを認識すれば、南朝鮮から米軍は出て行けという声が高まるでしょう。日本でチュチェ思想の研究と普及活動を活発に展開すれば、朝鮮の統一問題解決に寄与することになるでしょう。日本は他国の人々が多く往来するところです。日本は交通も便利で他の国々と多方面的に関係をもっています。日本に朝鮮大使館はありませんが朝鮮総聯があるので、われわれと連携をもつのにもよく、活動の過程で隘路がある時はわれわれが力を貸すこともでき、さまざまな側面で有利な点が多いと思います。もちろんチュチェ思想に関する研究組織をアフリカのある国におくこともできます。しかしアフリカ諸国は出版条件と交通条件において不利な点が多く、学者も少ないので人々にチュチェ思想を深く研究体得させることができません。このような点からみて、日本にチュチェ思想に関する国際的な研究組織の事務局をおけば学術研究と普及活動を立派にできることでしょう。

著名な学者である団長先生がチュチェ思想に関する国際的な研究組織の活動をひきうけられたというので、われわれはとてもうれしく思います。ご年輩の団長先生には負担が大きいと思いますが、先生の後ろにはチュチェ思想を研究するよい青年たちがいるので、活動をいくらでも立派にやっていけると思います。先生が日本にはチュチェ思想を研究する人が多いと言われましたが、彼らは日本人民と朝鮮人民のためによいことをしていると思います。団長先生が若い人たちを鼓舞すれば彼らは活動を立派にやっていくでしょう。

団長先生がわれわれの当該部門の幹部を通して、現国際情勢と社会主義教育問題について話してほしいと要請されましたので、それについて話しましょう。

今、国際情勢は非常に複雑です。

国際情勢が複雑なのは帝国主義者の策動のためです。帝国主義者は発展途上諸国が団結することを非常に恐れています。発展途上諸国は団結して複数の国際会議で新たな国際経済秩序を樹立することを要求しており、200海里経済水域を宣言し海洋資源を保護する問題をはじめ、さまざまな問題を提起しています。ひいては国連憲章を修正することまで提起しました。

アメリカ帝国主義者は政治と経済をはじめあらゆる分野で発展途上諸国から圧力をうけるようになると、狡猾な方法を使っています。帝国主義者は一方では発展途上諸国を内部から分裂させようと策動しており、もう一方では過去の植民地時代に引いた国境問題をもちだして国どうしが互いに対決し衝突するようにしています。帝国主義者の狡猾な策動により、アフリカではいろいろと複雑な問題が提起されています。西サハラ問題、エチオピアとソマリア間の領土紛争問題をはじめ複雑な問題が多く提起されているのは、みな帝国主義者の分裂、離間策動によって生じたものです。帝国主義者は中東の国々も団結できず、分裂するように策動しています。

アメリカ帝国主義者は発展途上諸国が団結できないようにするために世界のいたるところで破壊転覆活動を敢行しています。アメリカ帝国主義者はある国の執権者が進歩的道にすすもうとすれば、その政権を転覆させています。アメリカ帝国主義者はチリのアジェンデ政権を転覆させ、ラテンアメリカの他の国でも進歩的にすすもうとする大統領を右翼的人物に取り替えようと策動しています。

帝国主義者は「平和」の看板を掲げて狡猾に策動しています。

米国のカーター大統領もまさにそのように行動しています。今カーターは朝鮮問題で二面戦術を使っています。彼は対外的には南朝鮮を占領している米軍を撤収すると言いながらも、内的には南朝鮮に軍事力をさらに増強しています。アメリカ帝国主義者は南朝鮮の傀儡をそそのかして、人民に対する弾圧をひきつづき強化する方向にすすんでいます。

しかしアメリカ帝国主義者のこのような策動はうまくいかないでしょう。

ある米国の雑誌を見ると、カーターの外交政策が壁にぶち当たっていると言っています。米国務長官がアジアとヨーロッパの国々を訪問して成果を収めることができなくなるや、今度はカーターが直接さまざまな国を訪ねて行くようです。カーターは自らの外交政策が多くの側面で難関にぶつかり、それを収拾するために自分が直接まわるようです。

われわれが国際情勢を理解するうえで見過ごしてはならない一つの問題は、発達した資本主義国における経済危機がきわめて深刻であるということです。われわれはこれを非常に重要な問題とみなければなりません。

チュチェ思想に関する国際討論会に参加したある国の代表がわたしに第三次世界大戦が起こりうるかを尋ねましたが、誰であれ第三次世界大戦が起こらないとはいいきれないでしょう。歴史的に見ると帝国主義者は経済危機が深刻になるたびに、その活路を侵略戦争に求めました。第一次世界大戦もそのようにして起こり、第二次世界大戦もそのようにして起こりました。今帝国主義者が直面している経済危機が戦争を招かないと断言することはできません。

しかし、今は以前とは違うことも知らなければなりません。世界人民の自覚が高まっており、世界平和愛好勢力も強いです。今戦争を願う人はいくらもいません。もちろん、帝国主義者と反動は戦争を望んではいますが、全世界の人民は戦争を願っていません。そして帝国主義者と反動が戦争を起こそうとしても過去とは異なり人民大衆が追随しません。

日本人民の自覚も高まっています。「日米安全保障条約」に反対する日本人民の闘争気勢も高いです。原子爆弾の被害を最初に被った日本人民は核兵器に反対するたたかいも力強く展開しています。日本の少なからぬ人々が民主主義と社会主義を志向しています。このような状況で日本人民が軍国主義の道に向かう反動に反対する闘争をより一層強化することができると思います。

わたしは日本の自由民主党有志議員団がわが国を訪問した時に、この部屋で彼らと談話をしました。

わたしは彼らに日本は島国で工業原料の大部分を他国に依存している、このような状況で日本が軍国主義の道にすすめば世界人民の憎悪をかい工場の煙突から煙が出なくなるだろうと話しました。彼らに日本が軍国主義の道にすすまず平和的な道にすすみながら、発展した技術をもって発展途上諸国を助けそれらの国が発展するようになればどれだけよいか、日本が発展途上諸国と平等な立場で貿易をすれば日本の人民も豊かに暮らせるし、発展途上諸国人民が日本に対して感謝するのではないか、それなのに何のために軍国主義の道にすすもうとするのかと言いました。すると彼らはみな拍手をしました。これは彼らがわたしの話を歓迎するということであり、日本が軍国主義の道にすすむのを望まないということです。

かつて、日本は侵略戦争を起こして敗亡し、多くの損失を被りました。それゆえ自由民主党内の少なからぬ人が、日本が軍国主義の道をすすむことに反対しているようです。もちろん日本に冒険主義的に軍国主義の道にすすもうとする反動分子がいないとは言えません。

反動分子は南朝鮮にもいます。

日本が軍国主義の道にすすむことに反対する日本人民のたたかいとアメリカ帝国主義に反対する南朝鮮人民のたたかいは互いに結びついています。

わたしはわが国に日本の自由民主党有志議員団が来た時に、彼らに南朝鮮の朴正煕「政権」をたとえて言うと、昔われわれ朝鮮人が使っていた冠のようなものだ、冠というものは頭のうえにのせて両ひもを結んで維持される、ひもが切れたら冠は飛んで行ってしまう、ところが朴正煕「政権」の冠の片方のひもの役割はアメリカ帝国主義者が、もう一方の役割は日本反動がする、二本のひものうちどちらか片方が切れたら朴正煕「政権」は倒れてしまうと言いました。すると、ある若い人が立ち上がって自分たちが朴正煕「政権」を維持している片方のひもを切ってみせると言いました。他のもう一人が今の状況では自分たちが直ぐ冠の片方のひもを切るのは難しいが、うまくやれば冠の片方のひもを緩めることはできると言いました。それでわたしはあなた方が冠のひもを緩めるだけでもよいことだと言いました。

日本帝国主義者たちはかつてわが国で人民の闘争が起きると、干渉して弾圧しました。わが国で甲午農民戦争が起きた時にも日本帝国主義者は自国の居留民の生命財産を「保護」するという口実のもとに数多くの侵略武力を導入して農民軍を弾圧しました。今後どんな機会に日本軍国主義者が再び南朝鮮に侵略武力を導入しないとは誰も保障できません。われわれはこの問題について深く考えています。

あなた方が南朝鮮の知識人、宗教人をはじめ多くの階層との連帯を強化することはよいことだと思います。

今南朝鮮では共産主義的なスローガンや左翼的なスローガンを掲げることができません。もしも南朝鮮で人民がそのようなスローガンを掲げるとすぐに監獄にはいることになります。南朝鮮の現当局者はかつてのドイツのファシストよりもっと悪辣です。今南朝鮮には統一革命党があり、その党は地方にも党組織をもっていますが、合法的に活動をすることができません。

南朝鮮当局者は人民の革命的進出を野獣的に弾圧するばかりか、共産主義に対する悪宣伝を強化しています。彼らは、共産主義者は妻も財産も共同所有し、頭には角が生えていると言いながら、ありとあらゆる悪宣伝をしています。それで少なからぬ人々が反動の悪宣伝にだまされています。今南朝鮮の知識人、宗教人、言論人のなかで共産主義に反対する人がいくらかいますが、それは彼らが反動の悪宣伝にだまされて知らないからそうなるのです。

われわれは託児所をたくさん建設しましたが、それは女性を家事の重い負担から解放し、彼女たちが健康で社会に出て仕事をよくできるようにするためです。

あなた方が数日前にある週間託児所に行ったそうですが、週間託児所は俳優や記者のように出張が多い女性たちが一週間、子どもを預ける託児所です。他の託児所は子どもたちを朝預けて、夕方連れに行きます。資金が多くかかるので、すべての託児所を週間託児所にするのは困難ですが、子どもたちを国家がひきうけて集団的に育てるのは子どもたちを逞しく育てる意味でもよいし、女性たちの利便性を図るうえでもよいです。ところが南朝鮮の反動はわれわれが託児所で子どもたちを育てるのを見て、北朝鮮には子どもたちを自分の家で育てる自由もないと悪宣伝をしています。南朝鮮の一部自覚されていない人たちは反動のこのような悪宣伝にだまされ、社会主義社会を建設すれば子どもたちも自分の家で自由に育てることすらできないものと思っています。

南朝鮮の人々のなかで、われわれについて知らないために「反共」を唱える人々が一部にいますが、彼らがアメリカ帝国主義者の南朝鮮占領に反対し、朴正煕に反対し、民族的独立と民主主義のためにたたかう限り、われわれは彼らの闘争を支持しなければなりません。

団長先生が南朝鮮で「反共」宣伝にだまされている人たちも、いつかは必ず真理を悟るようになるだろうと言われましたが、正しいお言葉です。

北と南の間で会談がおこなわれたとき、南朝鮮当局者たちは南朝鮮の人々が平壌に来てわが方の人々がソウルに行くことをいちばん嫌がりました。なぜならわれわれに対する彼らの悪宣伝が嘘であることが明らかになるからです。

南朝鮮当局者は平壌には大きな建物は一つもない、北には物乞いをする人が多いと宣伝しました。しかし反共思想で固まった人たちも平壌に来てみて南朝鮮当局者の宣伝とは全く違うことを感じざるを得ませんでした。

北と南の間で会談がおこなわれている時に、こんなこともありました。その時、南側代表団とともに多くの記者が平壌に来ていましたが、ある日彼らが平壌市内をまわってみたいというので、わが活動家たちが一緒に乗用車に乗って市内を見てまわることになったのです。南朝鮮の記者 は通りかかる子どもたちを見るや車を止めてほしいと言いました。それで車を止めました。その時南朝鮮の記者が会った子どもたちは9~10歳程度の幼い生徒たちでした。その子どもたちに近づいた南朝鮮の記者は万年筆とノートのような学用品を彼らに渡そうとしました。ところが子どもたちはそれをうけとらず南朝鮮の記者に、わたしたちには万年筆もありノートもあるので、これを南朝鮮で靴磨きをしている子どもたちにもって行ってあげて、彼らもわたしたちのように学校で勉強できるようにして下さいと言いました。

われわれはいつも子どもたちに過去を忘れてはいけない、南朝鮮人民を忘れてはいけない、社会主義制度を愛せよ、未来を愛せよと教えています。われわれがこのような方向で子どもたちを教育してきたので、幼い生徒たちが南朝鮮の記者にこのような話をしたのです。幼い生徒たちの話は記者の心に響き胸を打ちました。結局、南朝鮮の記者たちは子どもたちと会って感動して帰りました。次の会談の時にその記者は平壌に来れず他の記者が来ていました。多分、南朝鮮当局者が恐れてその記者を替えたようです。南朝鮮当局者は平壌に記者を送るたびに記者を替えるのですが、そうすることはわれわれにとっては悪くありません。それはより多くの人たちが平壌に来てみて真実を知ることになるからです。

音楽について話が出ましたが、かつてわが国では民族音楽をどのように発展させるかという問題について論議がされました。一部の人たちは昔の音楽をそのまま生かすべきだと主張し、他の人たちはその意見をうけ入れようとしませんでした。わたしが一度昔の音楽についてどのように考えているかを知るために子どもたちに昔歌っていた歌を収録したレコードを聞かせました。すると、その子どもたちが聞きたくないというのです。都市の子どもたちは聞きたくないと言いますが、農村の青年たちはどのように考えているかを知るために今度は農村に出かけて青年たちを集め、談話をしたあとに、昔歌っていた歌を収録したレコードを聞かせました。ところが、彼らは歌を聞かないで窓の外を眺めていました。わたしが彼らに歌はどうかと尋ねたところ、面白くないと言うのです。

音楽では昔の歌も必要です。しかし昔の音楽を歌うからといって、明るく美しい声を出そうとしないで、わざとだみ声を出そうとすれば進取性が強く新しいものを好む青年たちは気に入りません。

民族音楽は固有な民族的特性を生かしながらも現代的美感に合わせて発展させなければなりません。民族音楽を現代的美感に合わせて発展させるからといって民族性を無視して、ご飯でもなくお粥でもないものにしてはなりません。

教育事業をとってみても、今一部の社会主義国では社会主義教育でもなく、資本主義教育でもない、どっちつかずの教育をしています。それゆえそれらの国では社会主義建設を正しくすすめることができません。

社会主義教育についてはマルクス・レーニン主義の創始者たちも文章で書き残したものは別にありません。エンゲルスが「共産主義原理」という文章で、人々を国家施設において国家の費用で育てることが必要だという程度に書いただけです。マルクスやエンゲルスは政権を執ることができず、実際に社会主義を建設できなかったために社会主義教育の具体的な内容を明らかにすることができませんでした。

レーニンがロシアで社会主義革命の勝利を収めた時から六〇年になろうとしています。ところが一部の社会主義国では利己主義思想がなくなるのではなく、かえって助長されています。

一つ実例をあげましょう。わが国でテレビを自力でつくる前に、われわれはある国から輸入して人民に販売しました。その時、その国からテレビ部門の技術者がわが国に来て、およそ半年ほど働いて帰りましたが、彼らが帰る時に自国で生産したテレビをわが国で買って行くのです。それで、わたしがわが活動家たちにその理由を聞いたところ、わが国ではその国よりも価格が安いからだと言うのです。わが国ではテレビを娯楽器材ではなく、人民の文化水準を高め文化革命を遂行するための文化用器材として供給するため、高い価格で買ってきて、人民に安い価格で販売します。技術者であれば大学を出ているだろうし、マルクス主義哲学も学んだでしょうが、このように利己主義思想が甚だしいのです。資本主義の包囲のなかでブルジョア思想の影響をうけ、そのうえ頭のなかに残っている古い思想の残滓を克服するための闘争をしなければ、大学を卒業しても利己主義思想がなくなりません。

社会主義社会では人間改造が何よりも重要です。すべての人々を革命化、労働者階級化しなければなりません。高等教育をうけた人々も革命化、労働者階級化しなければなりません。そうしなければ「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という集団主義の原則を実現できません。

昨年、ある社会主義国の代表団がわが国へ来てわが方の幹部と会談しました。その時、彼らはわが方の幹部に朝鮮では人民に対する供給活動をどのようにしているかと尋ねました。わが方の幹部は国家で人民の食・衣・住を保障しており、すべての人が平等によい生活ができるようにしていると話しました。すると彼らは、自分たちの国ではパンを自由に買えるようにしたところ、人々はそのパンで豚を飼って肉を売っており、砂糖を安く販売したらそれを買って酒を造り、密売をすると言いました。彼らは自国の供給システムが間違っていることを知っていても、教育活動をよくしていないことについては認識していなかったのです。

一部の社会主義国では社会主義教育でもなく、資本主義教育でもない、どっちつかずの教育をするので、大学を出た人たちが利己主義思想に染まり金儲けしか知りません。このようにしては社会主義を建設することはできません。

レーニンは、共産主義はソビエト政権に電化をプラスしたものといいました。

われわれの考えでは、ソビエト政権という言葉には労働者階級の国家が階級闘争と人民に対する思想教育をしなければならないという意味が含まれており、電化という言葉には発電所をいくつか建設しておくということではなく、技術革命をして国の物質的土台を強固に築き、勤労者を骨の折れる労働から解放するという意味が含まれていると思います。ところが一部の社会主義国の指導者たちはレーニンのこの言葉を正しく理解していないようです。

わたしは少し前に、米国の雑誌に載っていた記事を読んだことがあります。もちろんその記事は社会主義を誹謗中傷する意図で書かれたものだと思いますが、その記事には、ある社会主義国で共産主義青年同盟に加入した一部の青年たちが夜は共青の会議に参加し、日曜日には礼拝堂に行って祈祷をすると書いてありました。これが事実ならば、このような人たちがどうして社会主義建設をよくできるでしょうか。人々の思想精神状態がこのようでは到底社会主義建設は立派にできません。

このように社会主義社会では教育問題は非常に重要です。

あなた方が院和協同農場に行って稲刈りを手伝ったそうですが、わが農民を助け励ましてくれたことに感謝します。

院和協同農場はわたしが戦後に協同組合員として登録された農場です。われわれは戦後、農業協同化をするときに試験的に農業協同組合を組織しましたが、その時、院和農業協同組合の人々は暮らし向きがよくありませんでした。もともとその協同農場はかつて砂金採取場があったところで、耕地がよくありませんでした。それで土地をブルドーザーで平坦にならし改良するようにしました。その協同農場には果樹園もあります。今は院和協同農場員たちがよい生活をしています。院和協同農場を最初に組織する時にその組合に本がなかったので、わたしの家にあった本のなかから農民たちに必要な本を選んで送りました。

あなた方が、日本の零細漁民にわれわれがめぐらしたあたたかい配慮について彼らはもちろん日本の多くの良心的な人たちが感動している、と言われましたが、感謝します。

もともと、われわれは200海里経済水域を宣言する考えはありませんでした。ところが、わが国の周辺諸国が200海里経済水域を宣言しました。

米国が先に宣言し、つづいてソ連が宣言し、日本もそうしました。このような条件でこれらの国の間にあるわが国もやむを得ず、200海里経済水域を宣言せざるを得ませんでした。

200海里経済水域を宣言することは国の自主権に関連する問題です。わが国が200海里経済水域を宣言したことは人民の自負心を高めるうえで大きな意義をもちます。

もしわれわれが200海里経済水域を宣言しなければ、人民はあたかも200海里経済水域は大国だけが宣言できるものと考えるでしょう。それで、われわれは200海里経済水域を宣言しました。

われわれは200海里経済水域を宣言しましたが、日本の零細漁民が漁をするのは何の問題もありません。われわれは1年に100万トン以上の魚をとっていますが、わが国の海の魚をみなとることはできません。それゆえ日本の零細漁民がわが国の経済水域にはいって魚をとるにしても、別に大きな問題はないでしょう。先日、日朝友好促進議員連盟代表団が訪問し、わが国の経済水域内で日本の零細漁民が漁業をすることができるようにするための合意書をわが方と採択しました。その暫定合意書は今年すぐに効力を発することになるでしょう。

水産業はわが国で今後さらに発展させるべき部門の一つです。漁業を以前は危険な条件でおこないましたが、今は安全な条件でおこなっています。今わが漁業労働者は収入が多く暮らしもよくなっています。

みなさんが今後も健康で、活動において成果を収められることを願います。

(『金日成全集 第64巻』より)